MOIAUSSIBE/モーアシビー(もーあしびー)

EVENT

第14回フリースクールレポート! ヒロ杉山×仲程長治

5月26日に開催された第14回モーアシビーフリースクール。

ゲストはアートディレクターのヒロ杉山さんと、写真家の仲程長治さん。

ご来場頂いた皆さま、ありがとうございました!

 

 

第1部クロストーク「セカイの創り方」

第1部トークショーは、今回より沖縄県立図書館で無料開催。

MCのひーぷーさんによるナビゲートで、長治さんとヒロさんのお話を聞きました。

「セカイの創り方」というテーマのもと、それぞれの作品をプロジェクターで見ながら3人でトーク。

 

長治さんは、セカイを呼び込む派。

撮影に向かう前から、頭の中でロケハンし、イメージを先に作り、そこで撮っている心持ちになる。そして、現場では念じて撮る。撮りたい世界が固まっていて、それを呼び込めるので、シャッターは極力押さない。だから撮影がとても早いのだとか。

 

アートディレクターの視点から、あらかじめそれが誌面になったときのデザイン構図を考えて撮ることも、長治さんのこだわり。1枚の写真の中でタイトルを入れる場所、文章を載せる場所が、撮影したときから頭にしっかり描かれているそうです。

 

 

ヒロさんは、セカイが自然と湧き出てくる派。

世界観を作ろうと思わず、ただ絵を描いたり、グラフィックを作ったり、続けていると内面から湧き出てくるという話。既製概念や自分のスタイルを捨てて考える。「何をやってもいいよ」と自分に言い聞かせてから始めること。アイデアが湧き出る糸口は、そこにあるのだとか。

 

約30年間、今でも1日1枚必ず描き続けているというヒロさん。「絵は自分の内面に向かうもの。絵を描くだけ毒素が出ていく気がする。それによって核となる大切なものが残っていく」と。「お酒も飲まない、趣味もない、絵を描く以上に楽しみがない」と会場の笑いを誘っていました。

お2人には動画の作り手としての側面も。長治さんは、西表島のプロジェクト「Us 4 IRIOMOTE」について撮影中の映画映像を、ヒロさんは音楽イベントで発表しているVJとしての映像作品をプロジェクターで披露。

スチールとムービー、それぞれ撮影する際に意識することは「比率の違い」と長治さん。

スチールは4:3、ムービーは16:9。ムービーでは下に字幕が入ることを考えて、その分の空間を用意しているのだとか。

ヒロさんにとって映像制作は、音を翻訳するイメージ。「一晩中作業していると、音と映像がこれ以上ないくらいリンクする」というエピソードを話してくれました。

 

ひーぷーさんからの「これまで行き詰ったことは?」という質問には、対照的な答えが。

ヒロさん「まったくない。常に描いている途中から次のアイデアが押し寄せている」

長治さん「常に行き詰まっている。だからなるべくシャッターを押さないようにしている。1回だけ特別な瞬間をもらうことを大事にしている」

 

お互いの作品について抱いた共通の興味は、その構図。長治さんはヒロさんの作品に、「計算された余白がおもしろい」、ヒロさんは長治さんの作品に「文字を入れたくなる、デザインしたくなる写真」と盛り上がりました。

 

そもそもどうしてこの職業に就いたのか。

もともと家業の歯医者を継ごうと思っていたところ、ふとデザイン、イラストに興味が湧き、その道を選んだヒロさんの話。

内地のデザイン学校を卒業後、首里城の守礼門前で観光客の記念写真撮影を3年間続けた長治さんの話。これまでの軌跡も聞けました。

第2部ワークショップ「写真とZINEでつくる新しいセカイ」

1時間半、盛りだくさんのトークショー後は、場所をTERMINALに移して第2部ワークショップへ。

 

タイトルは「写真とZINEでつくる新しいセカイ」

まずは、長治さんによるレクチャーからスタート。

光と影の関係、カメラの仕組み、正しいカメラの持ち方、姿勢。カメラと友達になる。ゆっくりと息をはき、心を整える。シャッターは押すのではなく落とす。「あなたはもう菩薩になっている」というアドバイス。菩薩の姿勢はまるでシャッターを押す前の姿勢。「菩薩はカメラマンだったんですね」とみんなで大笑い。

 

お話の後は、講師2人と参加者全員で自分だけの「セカイ」を見つけに外へロケハン。

「前だけ見るのではなく、後ろも振り向いて、“ここを撮って!”といわれている場所を探してみましょう」と、長治さん。

 

そのイメージを頭に焼きつけながら、今度は実際にカメラを持って撮影タイム。15分間で、それぞれの世界をカメラで切り取りました。

会場に戻ると、いよいよZINE作り。撮影した写真の中から各自2枚だけをセレクト。それを見開き(2ぺージ)で使用し、参加者全員分を並べて、一冊のZINEを作ります。

 

用紙にプリントされた2枚の写真に、ペンで絵や文字を描いたり、色を塗ったり、写真を切って貼ってコラージュしたり、一人ひとり自由にアレンジ。

 

できあがった2ページを、今度はスキャンでとりこみ、ヒロさんがパソコン上で台割(ページネーション)を練っていきます。

 

 

表1(表紙)は長治さんが撮った写真、表4(裏表紙)はヒロさんが撮った写真を1枚ずつ使用。中面には、参加者11名の写真をプラスして、全24ページの個性あふれるZINEが完成しました。

最後に、どうしてこの写真を撮ったのか、テーマや伝えたかったことなどを一人ひとり発表。見ただけではわからない、それぞれの秘められた「セカイ」を聞く刺激的な時間となりました。

 

「ZINE作りはとにかく難しく考えないこと。思うがままに作ることが楽しい。自分の表現を形にし、ひとつの物質にすることにおもしろさがある」とヒロさん。

 

会場で校長先生のようにワークショップの様子を見守っていた信藤三雄さんも「それぞれのページに個性があっておもしろい。クオリティが高い!」と絶賛していました。

完成したZINEには、講師2人と信藤さんのサインも加わり、一層スペシャルな思い出に。

 

ひとりのセカイをみんなのセカイに変えたZINEづくり。

内面にあるセカイをそのまま一人で秘めておくだけなんて、もったいない。

そんなふうに、表現する楽しさ、大切さを実感した1日でした。

PHOTO/Sandy Kanako

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