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第16回フリースクールレポート! 書浪人善隆×外間信太郎【トーク編】
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第16回フリースクールレポート! 書浪人善隆×外間信太郎【トーク編】

第16回フリースクールレポート!

 

7月28日に開催された第16回モーアシビーフリースクール

ゲストは書アート作家の書浪人善隆さんと、スプレーアーティストの外間信太郎さん。

ご来場頂いた皆さま、ありがとうございました!

第1部トークショー

「沖縄のDNAアートとは?」

 

第1部トークショーは、今回も沖縄県立図書館で開催。

MCのひーぷーさんを交えて、善隆さん、外間さんとクロストークが行われました。

まずは、2人がアートの世界に足を踏み入れたきっかけから。

昔はなんと、ロボットを作る仕事をしていたという善隆さん。その後、専門学校の先生を経て、故郷の石垣島で市役所務めをしていたとき、あの有名な「海人」Tシャツの社長から誘われ、デザイナーの道へ。「海人」をくずして、「島人」など、「○人」シリーズのデザインを手掛けていたそう。

書道の師匠はいなく、あくまで我流。石垣島の自然から受けたバランスに触発され、沖縄方言の格言を自分風に書いたのが、はじまりでした。「書いていて楽しいから、もっと知りたくなる」。そんなふうに独学でいろいろ学び、書道界の人とお話ができるまで知識と経験を身につけていったのだとか。

書き順は知っているし、覚えている。でもそのとおりに書かないのが善隆さんのスタイル。

大切なのは、白い紙の中のバランスを考えて配置していくこと。正しい書き順より、「書としておもしろい表現をしたい。楽しみながら書きたい」という思いが根本にあると語ってくれました。

小さな頃から「絵で食べていきたい」という夢を抱いていた外間さん。高校卒業後は、京都の服飾デザイン会社へデザイナーとして就職するも、「とあることでリストラされ、もう一歩でホームレレスかというほどやぶれかぶれ(笑)」な状態に。次の職場では、希望していた職種につけず、「夢ってこんなものなんだなぁ」と落ち込む日々。そんなとき現場での仕事中、事故でICUに入るまでの大怪我を負うことに。

 

それを機に「人生一度きり。こうなったら絵を描いて死んでやる!」と沖縄へ帰郷しました。

そこで運命的に出会ったのが、防波堤に描かれていたグラフィティ。「かっこいい!」と魅了され、独学でスプレーアートの道を歩み始めることに。

ここで、外間さんがこれまで描いてきた作品をプロジェクターで紹介。

迫力たっぷりな龍が映し出されると「これがスプレー!?」とひーぷーさんが驚きの声を。水墨画のようなやわらかなタッチと「和」を意識した描写は、外間さん独自のスタイルです。

「アメリカから入ってきたグラフィティをそのまま真似するんじゃなくて、自分らしさを表現したいと思って。スプレーで出しきれない細かい部分は色鉛筆、パステルの合わせ技を使っています」(外間さん)

躍動感のある馬の作品は、パステルで描き、スプレーで仕上げたもの。「絵を続けていくか、やめようかと悩んだときに、すべてのしがらみをはらい、前に進んでいくことをイメージして描いた」という説明に、納得。

「むっちゃ、その感じ出てる!(笑)」と、ひーぷーさんも激しく共感!

 

外間さんの作品は、基本的に壁に描かれるので、サイズが大きいのが特徴です。

最も大きいのが「おきなわユーポス」の依頼で描いたというこちら。

 

ヨコ25メートル、タテ5メートルの壁に描いたスポーツカー。

 

「絵が大きいので、途中、遠くから引いて確認しながら描き進めないといけない。向かいのビルの3階に上って確認しては降り……を何回も繰り返して、体力的にもきつかった(笑)。使ったスプレーは全部で200本。日射病と筋肉痛と戦いながら、描き上げました」

 

善隆さんは「百聞は一見にしかず」とライブパフォーマンスを披露してくれることに。

ステージ上の赤い紙に、太い大きな筆を使って右から左へ、なにやら文字を描いていきます。

 

左手にマイク、右手に筆。おしゃべりをしながらのパフォーマンス。

「いつも歌ったり踊ったり喋ったりしながら書く。だから誤字が多いのかな(笑)」

 

右から左にEからB、なるほど「MOI AUSSI BE」を逆から書いているようです。

「文字を書くというより、空間をどういうふうに作っていくか考える。だから、逆に書いていくってことも普通にあるんですよ」

 

ダイナミックな「MOI AUSSI BE」の書アートができあがると、会場から大きな拍手。

次は、ひーぷーさんとのコラボ作品に挑戦です。

 

「あえてコラボしにくくしてみよう(笑)」と、ひーぷーさんが用紙の左端に描いたのは、小さな「の」の字。

 

善隆さんは、それに動じもせず、さくさく筆を加えていきます。

 

ん? これはなんでしょう?

 

「タテのままだとわからないから、これを横にしてみましょう」と、用紙を横に置き変えてみると……見えたのは「歩」という字!

「すごい! 俺だったら、あんなふうに“の”書かれたら絶望的なのに、よく思いつきますね」(ひーぷーさん)

「型にはまって書こうとしたらできないこと。ひーぷーさんの帽子もイメージしてみました。一瞬にしてパフォーマンスをアートにすることが大事」(善隆さん)

お客さんとのコラボにも挑戦。

まずお客さんが書いたのは、記号のような線。しかも、紙のセンターにどどーんと。

 

これにも迷わず、スイスイと書き足していく善隆さん。

 

できあがったのは、なんとも力強い「絆」の字。

「書いてくれたお父さんは、奥様と娘さん、家族で一緒に来てくれたので、そこからインスピレーションを得て、絆にしました」(善隆さん)

素晴らしいライブパフォーマンスに一同盛り上がった後は、核心に迫る「沖縄のDNAアート」について。

「歴史的に中国との交易もあって、アメリカ世の時代があって、日本の文化もあって、それをうまくミックスしていくチャンプルーが沖縄のDNA。いいところを真似して、さらにレベルをあげていこうというバイタリティーがある」(外間さん)

 

「だれもかれも排除しないで、取り入れて考えるのが大事。頑なにならず、いい意味でテーゲーになることも大事ですよね」(ひーぷーさん)

 

「そこにあるものでいいものを取り入れて、うまく形にするのがアート。他文化を取りこんで美しく仕上げていく。やさしさで後世に伝えていく。そういうチャンプルー文化が沖縄人のDNA」(善隆さん)

 

沖縄が生んだアートの形。生粋のウチナーンチュ3人の言葉が響く、素敵な締めくくりとなりました。

第2部ワークショップの記事へつづく。

 

PHOTO/TAKUMI TAIRA

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